代襲相続は、相続財産を受け継ぐべき相続人(亡くなった被相続人の後継者)がすでに他界している場合に、被相続人の子供(孫)がその代わりに相続財産を受け継ぐ制度である。
代襲相続に関連して、次のような疑問を持ってはいないだろうか。
- 代襲相続によるトラブルは頻繁に発生するのでしょうか?
- よくある代襲相続のトラブルは?
- 代襲相続のトラブルを回避する方法は何でしょうか?
代襲相続の場合、親世代と子世代といった異なる世代間で相続財産を分ける必要があるため、紛争や対立が発生しやすいのが特徴。
代襲相続に関連する問題は、次のような形で現れる。
- 代襲相続において、親戚同士が争う
- ある一方が相続財産の独占を試み、他の相続人に公平な機会を与えない
こうした不幸な状況を避けるために、代襲相続に関する知識を深め、トラブルを予防・解決するための術を身に着けておこう。
代襲相続はトラブルに発展することが多い
前述したとおり、代襲相続は通常の相続に比べて、トラブルになりやすい傾向にある。
代襲相続は、通常の相続と異なり、亡くなった被相続人の子供たちと、その子供たちの子供(孫世代など)といった、異なる世代間で協議することが必要となるからだ。
具体的には以下のような問題が生じやすく、トラブルの原因となる。
- 叔父・叔母または甥・姪といった親戚間の連絡不足や疎遠な関係がコミュニケーションを難しくするため。
- 相続人は孫世代である代襲相続人よりも年長であるため、強い立場に立ち、自分の利益を優先しやすいため。
- 相続人は、被相続人との関係が深く(介護を行ったり、贈与を受けたりしている場合など)、法定の相続分割が公平ではないと感じるため。
特に、相続人と代襲相続人との円滑なコミュニケーションが取れない場合は注意が必要。
相続財産の分割について合意を得るためには、各当事者が自身の状況や利益だけを考えず、以下のような要因を考慮しなくてはならない。
- 被相続人に対して行った介護や世話の貢献
- 被相続人の墓や財産の維持に必要な将来の費用
これらの負担を考慮して、全員が納得できる合意を見つけなくてはならない。
しかし、普段からのコミュニケーションがない場合、お互いの状況を理解し合うことや共感することが難しい。
このように、代襲相続にはトラブルが発生しやすいため、トラブルを予防する方法やトラブルが発生した場合の対処法を理解しておくことが重要となる。
代襲相続のトラブル事例5選
代襲相続が紛争の発生源となりやすい理由が明らかになりましたが、具体的にどのような紛争が発生するのだろうか?
トラブルの内容は、個々の事例によって異なりますが、一般的には5つのトラブルに分類できる。
- 相続人が代襲相続人と協力せず、自己の都合で手続きを進め、一方的に遺産分割協議書への署名を要求するケース。
- 相続人が代襲相続人に対して、相続財産を明らかにせず、相続放棄を求めるケース。
- 介護などの寄与分や生前贈与などの特別受益を考慮する必要があり、相続割合の合意が難しいケース。
- 遠方に住む代襲相続人が遺産分割に協力せず、手続きの進行を妨げるケース。
- 被相続人が債務を抱えているケース。
これらの代襲相続トラブルについて、詳細に説明していく。
相続人が代襲相続人と協力せず、自己の都合で手続きを進め、一方的に遺産分割協議書への署名を要求するケース。
代襲相続人は、ある一定の相続権を持つにもかかわらず、相続人が代襲相続人と協議せず、自身に都合の良い遺産分配協定に署名させる事例が存在している。
以上のケースではどうだろうか。考えると、孫である代襲相続人は、配偶者と子Aと同じ法定相続比率に基づいて相続財産を受け取ることができる。たとえば、相続財産が総額3000万円で、法定相続比率に従って分配する場合、配偶者・子A、孫はそれぞれ1000万円を受け取ることになる。
しかし、法定相続比率は、必ずしもそのまま相続財産を分配しなければならないという決まりではなく、当事者間で合意があれば、自由に分配比率を設定できることもある。
したがって、被相続人に近い立場にいる相続人は、「親戚である甥や姪に財産を相続させたくない」という理由から、一方的に権利を主張し、遺産分配協定書に署名させようとするケースが絶えない。
相続人が代襲相続人に対して、相続財産を明らかにせず、相続放棄を求めるケース。
代襲相続人は、相続人に「おじいちゃんやおばあちゃんの財産、どんなものがあるか教えて欲しい」と頼んでも、相続人が「言わないよ」とか「もう相続しないでほしい」と言うことがある。
おじいちゃんやおばあちゃんが持っていた土地やお金、それがどれくらいあるのか、代襲相続人たちはよく知らないことが多い。
でも、相続財産を詳しく知らないままだと、お金の分け方の話し合いが上手く進まなくなることがある。
介護などの寄与分や生前贈与などの特別受益を考慮する必要があり、相続割合の合意が難しいケース。
相続のお金を分ける時、大切なことがあります。例えば、おじいちゃんやおばあちゃんのお世話をしていたり、贈り物をもらっていたりした場合、それも考慮しなければいけない。
「私はずっとおじいちゃんやおばあちゃんのお世話をしてきたんだ。だから、他の人よりもっとお金をもらうべきだよね。」
「でも、弟はお金の贈り物をもらっていたにもかかわらず、同じ分け方はおかしいよ。」
こうした場面では、法律で決まっている分け方が公平でないこともある。でも、皆が納得できる分け方を見つけるのは難しいため、お金のことで言い争いが起きたり、大げんかになることもあるのだ。
遠方に住む代襲相続人が遺産分割に協力せず、手続きの進行を妨げるケース。
遺産を分ける時は、家族みんなが合意して、必要な書類を集めて手続きをしないといけない。でも、時々、親戚が遠くに住んでたり、ほとんど話さなかったりして、手続きが進まなくてトラブルが起こることもある。
今は、家族が小さくなってることが多いため、いとこやおじさん・おばさんと頻繁に会ったり連絡を取ったりすることはあまりないと思う。だから、トラブルが起きる前に、もっとコミュニケーションを取ることが大切になってくる。
被相続人が債務を抱えているケース
誰かが亡くなった場合、その人が借金を抱えている場合、その借金の支払いが懸念される。相続人たちは、その借金にどう対処すべきかを決定しなければならないからである。
しかし、代襲相続人と呼ばれる人々は、亡くなった人の財政状況についてほとんど知識を持っていない。そのため、代襲相続人は相続人が借金を負担しないようにするための手続きである「相続放棄」を行わなければならない。
問題は、代襲相続人がその手続きについて知識がないこと。つまり、代襲相続人は亡くなった人の借金について何も知らず、手続きを行わずに相続することがある。その結果、代襲相続人も借金を背負うことになってしまう。したがって、代襲相続人たちは相続放棄の手続きについて知り、必要な場合に行うことが重要である。
代襲相続のトラブルを回避する方法
生前に財産目録を作成する
被相続人が亡くなる前に、その人が持っている財産のリストを作っておくことは大切である。なぜかというと、相続財産を分ける話し合いが始まったとき、財産の全体像が分からないとトラブルが起きやすくなるからだ。例えば、お金や不動産、車、株などの財産がどれくらいあるのか、借金やローンも含めて、詳しくリストにしておくことが大切になってくる。
このリストは「財産目録」と呼ばれている。財産目録を作っておくと、相続の際にトラブルを避けるのに役立つ。財産目録には、お金があれば、どこの銀行にあるかや不動産の住所など、財産に関する詳細情報が記載されている。
財産目録は法律で義務づけられているわけではありませんが、作成することで相続に関する話し合いが円滑に進み、不公平な状況を避けるのに役立つ。したがって被相続人がまだ生きているうちに、財産目録を作ることをおすすめしている。必要なら、弁護士などの専門家に助けを求めることも可能である。
被相続人に遺言書を作成してもらう
遺言書を作ると、相続に関する問題を減らせる。遺言書があれば、その中に書かれた通りに財産を分けることができるからである。相続人たちが言い争いをしなくてすむのだ。
だから、大切な人がまだ元気なうちに、遺言書を作ってもらうと良い。しかし、遺言書を書くときに、特に「遺留分」という大切なルールを守ることも大切である。遺留分を守らないと、トラブルになるかもしれないので、注意する。
◆遺産分とは?わかりやすく解説
遺留分とは、遺言の中身に関係なく、相続財産の一部をもらえるルールのことである。遺言書を書くと、だれにどれだけ財産をあげるかを決められるが、遺言書に書かれた分が遺留分よりも少ない場合、残りの財産を他の相続人に請求できることもある。遺留分の割合はケースによって違うから、自分の状況に合わせて遺言書を書いてもらうときには気を付けよう。
生前から関係者と円滑なコミュニケーションをこころがける
被相続人が生きている間に、相続について話し合うことはとても大切である。なぜなら、被相続人が亡くなってから財産を相続すると、感情的になり、冷静さを失いやすくなるからだ。それに、事前に話をしておけば、自分だけの都合で相続を決めにくくなるし、関係者とトラブルが起きにくくなる。
確かに、相続の話をするのは難しいこともあるだろうが、トラブルが起きたときのことを考えて、相続について話すことが大切である。
代襲相続のトラブルになった場合の対応
関係者と円滑にコミュニケーションを取っていたとしても、実際に相続の段階になると、態度が変わったり、遺言書を作成していても異議を唱えられることがある。
トラブルが生じた場合、以下の5つのポイントを押さえておこう。
① すぐ遺産分割協議書にサインしない
② 相続財産を正確に把握する
③ 法定割合や寄与分、特別受益などを考慮して、自分の主張すべき相続割合を整理する
④ 長期的な視点で最善の主張を、関係者に受け入れやすい方法で伝える
⑤ 被相続人が借金を抱えている場合は、相続放棄の可能性を検討する
すぐ遺産分割協議書にサインしない
遺産分割協議書を読まずに、ただ他の人が言うことに従ってサインしないように気をつけよう。
一旦協議書にサインしてしまうと、その内容に同意したことになり、普通はそれを変えるのは難しいからである。協議書にサインした後に、たくさんの財産が出てくるなど、トラブルが生じることもあるから、サインするときは慎重に考えることが重要だ。
相続財産を正確に把握する
遺産を分ける話し合いを始める前に、相続財産(お金や物)が全部でどれくらいあるのかを知ることが大切である。全部の財産を知っておかないと、公平な分け方が難しい。
もし被相続人が生きている間に「財産目録」というリストを作っていたら、それを管理している人に、中身を聞いてみるのも良い。
でも、もし財産リストが作られていなかったり、自分で調べるのが難しい場合は、弁護士などに相続財産を調べてもらうこともできるので、相談してみることをおすすめする。
法定割合や寄与分、特別受益などを考慮して、自分の主張すべき相続割合を整理する
相続や代襲相続について、正しい情報を集めて、法定相続分や寄与分、特別受益などを考えて、自分がどれくらい相続できるかを考えよう。
代襲相続の場合、法定相続分は、必ずしも公平なわけではない。だから、以下のようなことを考えることが大事である。
・被相続人の介護をして、お金をかけて手伝いをしたこと(寄与分)
・被相続人からお金をもらったこと(特別受益)
これらを考慮することが大切である。だから、「自分がもらいたい相続のお金の割合」ではなく、「自分が主張できる相続のお金の割合はどれくらいか」を冷静に考えよう。
◆寄与分・特別受益とは?わかりやすく解説
「寄与分」とは、相続人が被相続人の財産を守ったり増やしたりしたときに、それを考慮して相続のお金を分けるルールのこと。
例えば、相続人の中の1人が、被相続人のお世話をしていたら、本来はお金を払って他の人にお世話をしてもらうはずだったのを、その人がお世話をしてお金を節約できた場合、その節約した分を足して、相続のお金を分けると公平になるといった具体だ。
「特別受益」とは、相続人が被相続人から贈り物やお金をもらったことを指す。
相続人がたくさんいる場合で、1人が金銭や家などの贈り物をもらった場合、その贈り物を考慮して相続のお金を分けることができる。ただし、遺言書がある場合は、遺言書の中身が優先されるから、注意が必要。
長期的な視点で最善の主張を、関係者に受け入れやすい方法で伝える
相続で他の人から事情を鑑みずに多くの財産を貰った場合、そのときには大切なことも失うこともある。お金や物を多くもらっても、友達や家族との関係や素敵な思い出を失うこともあるため、よく考えることも大切だ。
他の人の状況も考えて、将来を見越して、どのくらいのお金をもらうのが一番いいかを考えてみる。それから、自分の考えを相続人たちに分かりやすい言葉で伝えることが大切ではないだろうか。
被相続人が借金を抱えている場合は、相続放棄の可能性を検討する
被相続人がお金を借りていたり、借金がある場合、相続を放棄することも可能だ。
相続放棄は、裁判所に書類を提出して、被相続人が持っていたお金や借金など、全ての相続をなしにすることができる。
相続放棄をしないと、借金を返す義務があることになる。
代襲相続トラブルの際、相談できる専門家は?
結論、弁護士をおすすめする。相続トラブルを相続人の代わりに交渉・裁判などを行えるのは「弁護士のみ」だからだ。他の士業に相談し、紛争に発展した場合、また最初から弁護士へ説明することになるのは手間になる。
弁護士は、次のことができる。
- 他の人と相続のお金を分ける話し合いを代わりにして進めることができる
- 話し合いで問題が解決しない場合、調停や裁判の手続きを代わりにして進めることができる
- トラブルを避けるために、遺言書のアドバイスをして、有効な遺言書を作成することができる
- 相続放棄の手続きもしてくれる
だから、弁護士に依頼すれば代襲相続のトラブルに関するあらゆることを手伝えるため、トラブルが起きているかもしれない場合には、弁護士に頼むのがおすすめである。
弁護士費用について詳しく解説したので読んでみてくれ
まとめ
代襲相続トラブルについてまとめてきた。基本的にトラブル発生後に自力で解決することは難しく、いろいろ自分で時間をかけた結果、弁護士に相談する人も多い。
費用をかけたくないという気持ちは分かるが、せっかく大切な人が残してくれた財産で争いを長引かせるのは、故人も気の毒である。
士業の中には無料相談を行っている事務所も多くある。近くで信用できそうな士業(弁護士がおすすめ)にとりあえず相談してみてほしい。