被相続人と相続人のチェック
まずは、「被相続人」と「相続人」について、確認しておきましょう。
遺産相続では、遺産を残す人のことを「被相続人」、遺産をもらう権利がある人のことを「相続人」と呼ぶことが多い。
法定相続人の範囲と順位
ここからは法定相続人について一緒に見ていきます。
法定相続人とは「遺産がもらえる人」です。
逆に言うと、法定相続人でない人は「遺産をもらえない」。
では法定相続人とは、どのように決まっているのか?というのが以下の図です。
遺産相続のルールをざっくり説明します。
ルール①:配偶者は必ず法定相続人になることができる。(すでに亡くなっている場合や、戸籍上の妻でない場合は相続権はなくなる)
ルール②:第1順位、第2順位、第3順位はそれぞれ「子」、「故人の親」、「故人の兄弟」と決まっている
ルール③:第1順位、第2順位、第3順位の中で1つのグループしか法定相続人にはなれず、第1順位がいなければ第2順位、第2順位がいなければ第3順位と相続権が変わっていく。
ルール④:相続人には法律で定められた最低限の遺産を受け取れる権利があり、各順位でその割合が異なる。
法定相続人がもらえる遺産の割合
例えば、総額1,000万円の遺産を、配偶者と子供3人で法定相続分にのっとって分けるとすると
配偶者:500万円(1/2)
子供3人:500万円(1/2)
子供1人あたり:166万円
となります。お分かりいただけたかと思うが、子供3人で500万円を分ける形をとるので計算には注意が必要です。
孫は法定相続人になる?
原則として法定相続人にはならないが、以下の条件を満たす場合は相続が可能です。
遺言書がある場合
遺言書を作成すると、法定相続人以外を遺産相続の対象に指定することができ、孫への相続が可能となる。
遺言書による財産承継は「遺贈」と呼ばれ、特定遺贈(特定の財産を指定する遺贈)や包括遺贈(割合を決めて遺贈する遺贈)などがある。
遺言書の効力は強力ではあるものの、内容や書き方に不備があると無効になることもある。
孫を養子縁組にしている場合
養子も実子と同様の権利を持ち、養子縁組した孫は第1順位の法定相続人になる。
養子縁組遺言書がない場合でも、法定相続人として一定の財産を相続できます。ただし、養子の数には制限があるため、注意が必要。(実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと規定がある。)
代襲相続が発生した場合
図のように、第1順位である子Bがすでに死亡している場合、もしその子Bの子、故人からみて孫に値するお嬢さんが第1順位として法定相続人としての権利が発生します。
離婚をした場合、法定相続人はどうなる?
離婚をした場合、配偶者は親族ではなくなるため、相続人としての権利がなくなります。しかし、その子供については、第1順位の法定相続人として権利が残るので、覚えておきましょう。
相手が再婚した場合はどうなる?
離婚後に元夫が再婚した場合は上記と同様、元妻には相続権はないが、子供には相続権が残り続ける。
こういった相続関係になった場合、複雑な相続トラブルに発生する可能性が高まります。
・元妻の子と連絡が取れず、遺産分割協議が進まない(相続人全員の合意が必要なため)
・元妻の子に相続財産を渡したくない
・元妻が「うちの子にも相続権があるわよね」と図々しい態度
などのトラブルに発展する例はたくさんあります。
トラブルを避けるためにはあらかじめ夫の合意のもと、遺言を書いておいてもらうなどの対策が必要になってきます。
養子は法定相続人は含まれるの?
養子は、法定相続人に含まれます。
実子と同じ相続順位である第1順位の法定相続人となるので、前婚の子供がいる場合は注意が必要です。
相続人が増えると、相続税の控除額も増えることから、相続税対策として養子縁組をする家庭もあります。
相続放棄をすると法定相続人はどう変わる?
相続放棄をした場合、放棄をした相続人以外で相続をすることになります。
民法939条では、相続放棄を行った者は、その相続について、元々相続人として存在しなかったものとみなされます。したがって、相続放棄をした相続人がいる場合、放棄した相続人は権利を持たず、法定相続人および相続分の計算から除外されることとなるので注意が必要です。
具体例
①父が亡くなり、相続人が妻と2人の子供の場合で、妻が相続放棄した場合
この場合、法定相続分は、妻が2分の1、子供2人がそれぞれ4分の1。しかし、妻が相続放棄すると、妻は初めから相続人として扱われないため、亡父の法定相続人は子供2人だけとなります。したがって、子供2人の法定相続分はそれぞれ2分の1です。
②父が亡くなり、相続人が妻と2人の子供の場合で、1人の子供が相続放棄した場合
この場合、法定相続分は、妻が2分の1、子供2人がそれぞれ4分の1です。しかし、1人の子供が相続放棄すると、その子供は初めから相続人としては認められません。したがって、亡父の法定相続人は妻と残る1人の子供だけとなり、彼らの法定相続分はそれぞれ2分の1になります。
③父が亡くなり、相続人が妻と2人の子供の場合で、子供が相続放棄した場合
この場合、法定相続分は、妻が2分の1、子供が2分の1です。しかし、子供が相続放棄すると、その子供は初めから相続人としては認められません。したがって、亡父の法定相続人は妻と直系尊属(子供のこと)だけとなる。その場合、妻が3分の2、直系尊属が3分の1の法定相続分を持つことになります。
なお、直系尊属がいない場合、妻と兄弟姉妹が法定相続人となり、その場合、妻が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の法定相続分を持つことになります。
まとめ|法定相続人の把握はそこまで難しくない
相続が初めての人にとって、まず構えてしまうのがこの法定相続人ですよね。なれない言葉がたくさんあるため、混乱してしまいがちですが、基本的には配偶者のどちらかと子が相続人になるケースが多いです。
その中でトラブルが起きてしまっている人についてはすぐに弁護士に相談することをおすすめします。相手方も弁護士に相談している場合、なるべく早く対処することが、自分の権利を守るために重要だからです。
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