相続でもめた場合、即裁判?訴訟すべきケースを解説

遺産分割の手続きにおいて紛争が生じた場合、解決の手段として「調停」や「審判」を検討することが一般的です。ただし、遺産関連の問題には、時には訴訟が必要な場合もあります。

遺産相続において、どの手続きを選択すべきかは理解が難しい側面があります。この機会に、遺産分割に関する問題を解決するための手段を整理してみましょう。調停、審判、訴訟のそれぞれの違いと、それらを活用する場面について解説します。

目次

相続でもめた場合、訴訟ではなく調停や審判で解決する

遺産分割における紛争は、通常、訴訟ではなく調停や審判によって解決されます。この手続きは、家事事件手続法別表第二に詳細に規定されており、「別表第二事件」と呼ばれています。

別表第二事件においては、訴訟の提起は認められていません。その代わりに、「家事調停」と「家事審判」と呼ばれる手続きが利用されます。

そもそも調停とか審判ってなんだよ

遺産分割調停と審判の違いとは?

遺産分割調停は、基本的には相続人と包括受遺者間で遺産分割に関する合意を形成することを目的とした手続きです。このため、調停案に反対する当事者がいる場合、調停は成立しません。

一方で、遺産分割審判は裁判所が客観的な視点から遺産分割問題の解決方法を示す手続きであり、反対があっても最終的には審判が当事者に拘束力を持つ特徴があります。

審判と訴訟の違いは?

審判と訴訟は、対立する当事者間の紛争解決において共通点がありますが、審判は訴訟とは異なる特徴があります。

審判は非公開で行われ、柔軟な審理と判断が家庭内の実情に即応するように心掛けられます。審判には処分権主義や弁論主義が採用されず、当事者が請求・主張していない事柄も含まれ、即時抗告等の手続きが許可されます。

遺産分割調停・審判の申し立て方法

遺産分割調停の申し立ては、申立書を提出することにより、以下のいずれかの家庭裁判所で行います。

<遺産分割調停の管轄裁判所>

  1. 他の相続人と包括受遺者の一人の住所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法4条)
  2. 当事者が合意で定める家庭裁判所(同法66条1項)

具体的な必要書類や費用については、裁判所の公式ウェブサイトや申し立て時に弁護士や裁判所担当者と相談しながら確認してください。

遺産分割審判については、遺産分割調停が成立しなかった場合に自動的に移行します。遺産分割調停を経ずに直接遺産分割審判を申し立てることも可能ですが、実務上は話し合いを通じて解決を図る方が好ましいとされています(家事事件手続法274条1項)。

解決までの流れは?

まず、遺産分割協議が合意に達しない場合、当事者は家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停委員が介入し、遺産分割の方法について合意を模索します。

相続人と包括受遺者の全員が裁判官の提示する調停案に同意すれば、調停は成立し、調停内容に基づいて遺産分割が行われます。

一方、全員の同意が得られない場合、調停は不成立となり、「遺産分割審判」に移行します。裁判所が当事者の主張を聞き取り、審判によって遺産分割の方法について結論を示します。

審判が確定すると、当事者は即時抗告等の手続きを経て審判内容に拘束され、そのとおりに遺産分割を行わなければなりません。

遺産相続で訴訟が行われる様々なケースを紹介

遺産相続に関する訴訟のケースにおいては、遺産分割方法そのものを争うことはできませんが、それに先立つ法的問題や、遺産分割とは別個の法的問題が存在する場合、これらの問題に関する訴訟が行われることがあります。

遺産の範囲でもめた場合|遺産確認訴訟

財産の隠匿が疑われたり、被相続人が他者の名義で財産を所有している可能性がある場合、遺産分割の前に遺産の範囲を確定する必要があります。このような場合、「遺産確認訴訟」が提起されることがあります。

相続人の範囲でもめた場合|相続人の地位不存在確認訴訟

相続欠格が適用される可能性や、養子縁組が無効であるといった理由に基づき、特定の相続人に関する相続権の有無が争われるケースがあります。この場合、「相続人の地位不存在確認訴訟」が行われ、相続権の有無が争われます。

遺言の有効性でもめた場合|遺言無効確認訴訟

形式不備や偽造、変造などの理由に基づき、被相続人が作成した遺言書が無効であると主張される場合があります。このような場合、「遺言無効確認訴訟」が提起され、遺言の有効性が争われることがあります。

遺産分割協議の撤回や効力喪失を主張する場合|遺産分割協議無効確認訴訟

既に行われた遺産分割協議の取り消しや無効が認められれば、遺産分割はやり直しとなります。

遺産分割協議の取り消しや無効は、「遺産分割協議無効確認訴訟」において争われます。

遺産が不当に使用された場合|損害賠償請求訴訟・不当利得返還請求訴訟

相続人の一部によって遺産が不当に使用された場合、相続人は遺産の返還または失われた遺産の価値に相当する金銭の賠償を行う責任があります。

遺産の返還や金銭賠償は、「不法行為に基づく損害賠償請求訴訟」または「不当利得返還請求訴訟」によって争われます。

遺留分が侵害された場合|遺留分侵害額請求訴訟

法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人は、民法1042条1項に基づき、「遺留分」と呼ばれる相続財産の最低保証額を受ける権利があります。

遺留分が不足している場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行い、遺留分の不足分に相当する金銭の補償を求める権利があります。この請求は民法1046条1項に基づきます。

遺留分侵害額請求は、訴訟によって争うことができます。

まとめ

遺産相続のトラブル対応は弁護士に相談を 遺産相続に関する問題が発生した場合、遺産分割方法に関しては「審判」が行われ、それ以外の前提問題や関連事項については「訴訟」が行われることがあります。

審判や訴訟は協議ではなく、対立する当事者同士が主張を争わせる手続きです。十分で適切でない対応をとると、不利な審判や判決が確定し、意外な損害を被る可能性があります。そのため、遺産相続に関するトラブルへの対応については、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

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