相続の中でも特に「遺産分割のトラブル」は、おおよそ家族の中で遺産の分け方についての話し合いが難航し、不公平な相続を強いられてしまう場合も多くあります。
この記事では、よくある相続のトラブルのケースごとにどのように解決すれば良いかの知識を身につけていきましょう。
遺言の内容に納得がいかない!!長男が遺産を独り占め
黒崎さん(仮名 48歳)の母親は今年亡くなりました。葬儀の後、家族が集まったタイミングで、長男が母親の遺言書を持ち出してこう言います。
遺言書を確認すると、たしかに「全財産を長男に相続させる」と書かれています。母親は生前、嫁に行った黒崎さんや妹よりも、長男のことを可愛がっており、まさに母親が遺言書に書きそうな内容です。
しかし、黒崎さんにとっては、長男が遺産を完全に相続することには納得がいきません。
黒崎さんは1円たりとも財産を貰えないのでしょうか。
知っておきたい知識とアドバイス
相続人には最低限もらうことのできる遺留分が法律で定められており、申立書を送付したり、裁判所で調停を行うことが可能である。
多くの場合は弁護士を介入させて相手に納得してもらうことになるだろう。相続人同士が話し合ったところで、議論が平行線で進まないことが多いからだ。
弁護士が介入することで、相手側も交渉に応じてくれやすくなるのに加えて、法定相続分の請求も可能になる。(法定相続分は遺留分より大きい金額)
それでもかたくなに交渉に応じない場合は、家庭裁判所に訴えを起こすことも可能だ。
母親が遺産を分けてくれない!
神谷さん(仮名 53歳)の父親は今年亡くなりました。相続人は母、神谷さん、弟の3人。母は相続の手続きが面倒で、神谷さんに押し付けてきました。
手続きを進める中で遺産分割の話し合いになったのですが、母が
と言い出したのです。
母の言い分もわかるのですが、相続の手続きをしている私が遺産を1円ももらえないのは納得がいきません。
「こんな時間と労力を割いているのだから、少しくらいわけてくれてもいいじゃない」
神谷さんは1円ももらうことができないのでしょうか。
知っておきたい知識とアドバイス
しかし、お母様がいつか亡くなった時に、子供達で財産分与をするという形でも遅くはないという考え方もある。遺産について争うことで親子関係が悪化してしまう可能性があるからだ。
大変な相続の手続きは、専門家に依頼することもできるし、その場合の費用は故人の遺産から負担することもできるので、検討してみてほしい。
それでも母親が大変な浪費家であるケースや、子供の教育費などが詰まっているケースもあるだろう。神谷さんのように第一順位の相続人(子)であれば、権利を主張したい場合は弁護士に相談してみると良い。
父が生前、妹にかなりの援助をしていた。その分はどうなる?
柿本さん(仮名 67歳)は弟、妹の3人兄弟です。
父親が亡くなり、あわただしくお葬式と四十九日を済ませたところ、遺言書が見つかりました。
遺言書によると、「自宅は長男に、土地を次男に相続させる」とのこと。自宅は1,000万円ほどで、土地は400万円ほどですが、2人とも遺言のとおりに分けることで納得しています。
というのも妹は父親の生前、1200万円の援助を受けていました。
柿本さんと弟は、その分があるので、遺言通りの相続で良いのではと考えています。
知っておきたい知識とアドバイス
特別受益に当たる場合、妹が援助を受けた1200万円は遺産に含めて各人の相続金額や税金を計算しなおす。このケースでは、遺産総額が2600万円であるため、各個人の法定相続分は833万円となる。
法定相続分より多くもらっている妹は、権利を主張することはできない。つまり、遺言書のとおりに分割するのが妥当である。
長女が預金を使いこんだ!
田中さん(仮名 60歳)は3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいます。
長女は父親が亡くなった後、母親と同居して介護に勤めており、日々の生活費の支払いをするため、母親の通帳は長女が管理していました。
しかし、母親が亡くなったとたんに、長女が母親の銀行口座からどんどんお金を引き出し、自分の好きなものを買っていたのです。
「もともと残高はほとんどなかった」と長女は言い張りますが、銀行に照会したところ、母親が亡くなった時点では900万円残っていたことが分かりました。
さらには
と言ってきました。田中さんは到底納得できません。
この場合、どうしたらよいのでしょうか。
知っておきたい知識とアドバイス
さらに、使いこんだ金額は相続分である400万円上回るため、他の相続人が本来貰うべき遺産額になるよう、返金する必要があります。