遺産相続で土地が絡む兄弟トラブルとは?上手な分割方法5選

親が亡くなると、土地の相続において兄弟同士で紛争が生じることがあります。

これは、相続人が兄弟の場合、土地は兄弟全体で共有され、その共有の割合は法定相続割合に基づきます。たとえば、3人兄弟が土地を相続した場合、各兄弟は1/3ずつの共有持分を有しています。しかし、これを放置すると、2次相続や3次相続によって共有者が雪だるま式に増加していく可能性があります。

多人数の共有土地を回避するためには、相続後に兄弟同士が協議し、土地を誰か一人が単独所有するか、あるいは処分(売却)するかを決定する必要があります。ただし、共有物を売却する際には、全ての共有者が同意する必要があります。

兄弟が遠方に住んでいたり、関係が希薄な場合、このような協議が上手く進まないことがあり、それが揉め事の原因となります。

円滑な解決を図るためには、自分だけの都合ではなく、兄弟同士がお互いに妥協し合って遺産を分割することが肝要です。

この記事では、土地を相続した際に兄弟が分割する方法と留意点について紹介し、また、兄弟間での論争の原因にも触れます。最後までお読みいただき、兄弟で土地を相続した際の対処法として参考にしていただければ幸いです。

目次

土地の相続において兄弟が対立する主な要因

兄弟同士の論争の原因を理解した上で、それに対する解決策を見つけてみましょう。

遺言書や金銭的な問題、また寄与分など、これらが兄弟間の対立を引き起こす一因となります。これらの原因を理解することで、円滑な土地相続に向けて有益な情報となるでしょう。

遺言書が存在しない

遺言書が存在しない場合、兄弟間での論争の根源となります。遺言書は、亡くなった人が遺産の配分やその他の事項について書き残した文書であり、生前に作成されます。

遺言書は一般的に資産家が作成するものとされがちですが、それは誤解です。相続は誰にでも発生する可能性があり、被相続人が財産の配分方法を定めておくことは、資産家以外の人にとっても十分に重要です。

遺言書には財産の分配方法が明記されているため、原則的にはその内容に従います。遺言書が存在しない場合は、相続人が自ら協議し、遺産の分配方法を話し合います。これを「遺産分割協議」と呼びます。

具体的には、被相続人が生前に遺産を分ける方法が遺言であり、被相続人が亡くなった後に遺産を分ける方法が遺産分割協議となります。

遺言書が存在すると、兄弟間での主張合戦が減少し、対立回避に寄与します。なお、遺言の内容は遺産分割協議によって変更可能であり、極端に不合理な場合は相続人同士が合理的な分配方法を話し合うこともできます。

ただし、遺産分割協議の成立には全員の合意が必要であり、協議が成立しない場合は遺言書通りとなります。そのため、遺言書の存在は非常に重要です。

未だ相続が発生していない場合は、親に遺言書を作成してもらうことを検討してみてください。

現金がわずかで、相続財産の中で不動産が占める割合が大きい場合

例えば、自宅とわずかな貯金だけを残して他界した場合、相続財産の中で不動産の占める割合が高くなります。相続財産には不動産や現金が含まれますが、現金は分けやすいため、通常は対立の原因にはなりません。しかし、不動産は売却しない限り等分に分けることが難しく、これが兄弟間の対立の要因となります。

具体例として、被相続人の家が3,000万円で貯金がわずか400万円だとします。兄弟の中で兄が自宅に住んでおり、弟は独自に住んでいる場合、自宅を兄が相続し、弟が現金を相続すると、兄は3,000万円を相続する一方で、弟は400万円しか相続できません。この不動産の分配により、金銭的な不公平が発生します。

不動産は分割が難しい財産の一つであり、これが金銭的な公平性に影響を与えることを理解することが重要です。土地もまた不動産であり、一方に寄せると金銭的な不公平が生じる可能性があるため、慎重に対処する必要があります。

生前の想定よりも現金が不足していた場合

相続財産の中で思わぬ金額の減少が生じ、これが兄弟間での論争の原因となります。この問題は、相続の事前準備を十分にしていたとしても発生する可能性があり、注意が必要です。

知恵のある兄弟は、親が他界する前から数年前から相続に関する話し合いを進めていることがあります。これは非常に有益な取り組みであり、むしろ積極的に行うべきです。

例えば、親が他界する3年前の資産状況が、不動産が3,000万円、現金が1,000万円であったとします。この時、兄が3,000万円の不動産を相続し、弟が1,000万円の現金を相続することで合意が成立していました。

しかし、被相続人が他界する前に病気にかかり、医療費や介護費用が多額に発生した場合は慎重になる必要があります。その結果、相続時の財産が不動産が3,000万円、現金が50万円しかないといった状況になることがあります。

このような場合、弟は予想していた1,000万円ではなく50万円しかもらえないことになり、期待とのギャップが論争の原因となります。現金は瞬く間に減少する可能性があるため、相続前に分割の準備をしていても、財産状況が変動することを理解しておくべきです。

したがって、被相続人が生前に相続の準備を進める際には、現金が他界時に減っている可能性も考慮する必要があります。

寄与分を主張すること

寄与分は、被相続人の生前に相続人の一部が特別な寄与をして被相続人の財産を維持または増加させた場合に、他の相続人との不公平を解消するための制度です。具体的な例として、兄が親の近くに住んでいて介護に特別な貢献をしたと主張し、「最後の介護は自分が行い、苦労もした。お前は何もしなかったから、私が多くの財産をもらうのは当然だ!」といった議論があります。

寄与分の主張が始まると、話し合いが難しくなり、対立の原因となります。基本的には、寄与分を認めるかどうかは、遺産分割協議において兄弟間の話し合いで解決することができます。弟が「兄さんには最後の介護を頼んだから、この土地は兄さんに譲るよ」と合意すれば話がまとまることもあります。

しかし、合意が成立しない場合は、家庭裁判所での調停が行われます。ただし、調停では通常の介護活動による寄与分は認められることが少ない傾向があります。一般的な介護活動においては、子供が親の介護をするのは当然のこととされ、兄弟間で差があっても、介護に対する寄与分が認められるケースは稀です。

普通の介護程度では寄与分が認められないことを理解することが重要です。

特別受益を主張すること

特別受益は、被相続人から贈与などを受け、特別に受けた利益を指します。

民法上、特別受益の対象は次の3つです。

  1. 遺贈(遺言によって遺産を無償で相続人に譲渡すること)
  2. 結婚または養子縁組のための贈与
  3. 生計の資本として受けた贈与

特別受益がある場合は、これを考慮して財産の分配が認められます。ただし、特別受益がどこまで認められるかは具体的なケースに依存します。

例えば、弟が公立高校から地元の国立大学に進学し、兄が私立高校から東京の私立大学に進学した場合、「兄さんだけ東京の私立に進学させてもらったから、財産は少なくてもよいはずだ!」などと主張されることがあります。高等教育のための学費は特別受益とされますが、通常の教育の範囲内では特別受益には該当しないため、他の共同相続人も同様の教育環境の場合は特別受益にはなりません。

特別受益は、原則としては明確なもの以外に認められにくいですが、個人的な感情を主張し始めると論争の原因となります。相続に関する論争では、時には子供時代の出来事までが話題にされることもあります。

個人的な感情やわだかまりは通常の特別受益とは見なされにくいことを理解しておく必要があります。兄弟間の論争を避けるためには、自分だけの利益を追求する発想を捨てることが重要です。

土地が共有のままで問題が生じる理由

共有者全員の同意がない限り土地の売却が許可されないという規則があるからです。

たとえば、3人兄弟が共同で相続した土地がある場合、2人が売却に賛成しても、もう1人が反対すれば土地の売却は不可能です。

相続した土地を共有のままにしておくと、そのままにしておくと2次相続、3次相続といった形で共有者が増え続ける可能性があります。

共有者が増えると、全員の同意を得ることがますます難しくなり、共有物件が売却に至るまでの過程が複雑になります。これが続くと、土地が膠着した財産となり、売却が難しくなります。

したがって、土地を相続した場合は、基本的には共有のままにせず、誰か一人が単独で所有するか、あるいは売却することが望ましい対応です。

兄弟で相続した土地を分割するためには、以下の5つの方法

  1. 遺産分割協議
  • 兄弟間で話し合いを行い、相続財産を合意に基づいて分割する方法です。
  1. 相続放棄
  • 兄弟の中で一部が相続権を放棄し、残りの相続人が土地を独占する方法です。
  1. 代償分割
  • 代償金を支払うことで、兄弟間で土地を分割する方法です。代償金の額は合意に基づきます。
  1. 換価分割
  • 土地の価値を算定し、その価値に応じて他の財産や資産を兄弟間で調整して分割する方法です。
  1. 分筆による現物分割
  • 土地を物理的に分割し、それぞれの兄弟が別々の部分を所有する方法です。この場合、土地の形状や価値の均等性に注意が必要です。

これらの方法について、以下の章で詳細に解説していきます。

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人同士が相続財産の分割方法について合意するプロセスを指します。最終的には、この合意内容をまとめた書面を遺産分割協議書と呼びます。

相続財産は通常、法定相続割合に従って均等に分割することが難しいため、遺産分割協議によって法定相続割合とは異なる割合での分割が行われます。

遺言と遺産分割協議は、法定相続分と異なる割合で財産を分割する2つの方法です。

【遺言と遺産分割協議の違い】

  • 遺言:被相続人(亡くなった方)の生前に遺産を分割する。
  • 遺産分割協議:被相続人が他界した後に遺産を分割する。

遺言が存在しない場合、または遺言内容に不満がある場合、遺産分割協議が行われます。遺産分割協議は法的な義務ではなく、期限がないため、必要な時に実施できます。

ただし、相続税の納税期限は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内であるため、相続税の納税が必要な場合は、10ヶ月以内に遺産分割協議を終えることが望ましいです。

遺産分割協議では、相続人がどの遺産をどの程度相続するかについての内容が遺産分割協議書にまとめられます。

この協議書は、銀行口座の払い戻しや土地相続の名義変更などに使用される正式な書類であり、作成には司法書士や行政書士などの専門家への依頼が一般的です。

遺産分割協議書の作成費用は、遺産総額の0.5%~1%が目安であり、作成に際しては相続人全員の実印と署名が必要です。

相続放棄

相続放棄は、相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない方法で、実際には頻繁に採用されます。

通常、相続放棄は被相続人の財産が債務よりも多く明らかな場合に行われます。親が多額の借金を抱えたまま他界した場合、相続放棄によって相続人は債務を免れることができ、効果的な手段となります。

実際には、親が財産を残している場合でも、兄弟の中で特定の人に資産を集中させるために相続放棄が利用されることがあります。

例えば、親の相続財産が3,000万円の自宅と50万円の現金だけであり、姉は結婚して遠方に住んでおり生活基盤があります。また、弟は実家に住んでいます。

姉は自分には必要のない相続財産を兄弟に寄せるため、相続放棄を行い、兄弟の中で一人に財産を譲ることで遺産分割を実現します。これにより、不動産がその兄弟の単独所有となり、共有状態が解消されます。

相続放棄のメリットは「手続きが簡便」かつ「費用が安い」という2点にあります。家庭裁判所に提出する「相続放棄の申述書」を準備するだけで行え、一人で実施可能です。遺産分割協議書のような兄弟間の複雑な話し合いも不要です。

また、費用も約3,000円で済むため、遺産分割協議書を作成するよりも経済的です。

相続放棄に必要な費用

  • 相続放棄の申述書に添付する印紙代:800円
  • 被相続人の戸籍謄本:450円
  • 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍謄本:750円
  • 被相続人の住民票:300円(市区町村によって異なる)
  • 申述人の戸籍謄本:450円

相続の開始を知った日から3か月以内に相続放棄を行う必要があります。共有状態を早期に解消したい場合は、迅速な対応が求められます。

代償分割

代償分割も相続財産を公平に分割する手段の一つです。この方法は、相続人の中で一部が他の相続人よりも多く財産を相続した場合、不公平を解消するために相続人が金銭を支払う方法です。

例えば、2人の兄弟が親の相続財産として3,000万円の土地と1,000万円の現金を受け継いだとします。この場合、兄弟それぞれは2,000万円ずつの財産を平等に相続する権利があります。

しかし、兄が3,000万円の土地を相続し、弟が1,000万円の現金を受け取るという分割方法では公平性が欠けています。

そこで、3,000万円の土地を相続した兄が、自身の貯金から1,000万円を代償金として弟に支払うことで調整します。

この手法により、兄は実質的に2,000万円(=3,000万円 – 1,000万円)の資産を相続し、弟も合計で2,000万円を得ることができ、公平な相続が実現します。

ただし、代償分割を実施するためには、金銭を支払う相続人が相応の現金を有している必要があります。理論的には公平な分割手段であるものの、実際には難易度が高い場合もあります。

換価分割

換価分割は、遺産を売却して得た現金を相続人同士で分割する方法です。特に不要な土地を相続した場合、換価分割は現実的で効果的な分割方法となります。

不動産、例えば自宅のような場合、相続人の中で誰かがその不動産を引き続き利用することがあります。このような場合、売却が難しいため換価分割は実施できません。

しかし、相続人が利用する予定のない不要な土地であれば、売却し得た現金をもとに換価分割を行うことが最も公平かつ合理的な分割手段となります。

不要な土地の場合、共有のまま売却し、得た現金を相続人同士で分割する方法がスムーズに実施できます。

分筆による現物分割

分筆による現物分割は、土地そのものを物理的に分ける手法です。土地を切り分けるプロセスを指します。

例えば、都心部の優れた場所にある大規模な土地は、売却するのはもったいないと判断されることがあります。100坪ほどの大きな土地なら、2人兄弟で分筆しても50坪ずつになります。この50坪は住宅用地としても、駐車場としても充分な利用価値があります。分筆によって、相続人それぞれが土地を活用できるのです。

このような場合、分筆により土地を半分に分け、兄がその土地に自宅を建て、弟が土地を売却するといった選択も可能です。

現物分割の利点は、各相続人が土地を自由に利用できることです。ただし、現物分割を選ぶ際には、土地が十分に広いことが条件です。40坪の土地を半分に分けると20坪になり、狭すぎて有効活用が難しくなります。

小さな土地では逆に価値が低下するため、狭い土地には現物分割が適していません。一般的な一戸建ての敷地は40~60坪ほどですので、2人兄弟で現物分割を検討する場合は、80坪以上の土地が望ましいです。

現物分割は、分筆後にも土地に十分な利用価値や売却の可能性がある広い土地で実施するのが適しています。

土地を売却して分割する際の留意事項

土地相続において兄弟間で紛争を避けるためには、土地の売却に関する詳細な理解が肝要です。このセクションでは、土地を売却して分割する際の留意事項に焦点を当て、ご紹介いたします。

最低売却価格の設定

換価分割においては、共有物件の売却が求められることがあります。しかし、共有状態での売却において留意しなければならないのは、売却価格に対する異なる意見が生じる可能性です。

例えば、兄弟のうち兄は3,000万円での売却が十分だと考えている一方で、弟は3,500万円でなければ合意しないという場合があります。共有物件の売却では、価格についての合意が得られない限り売却が難しいため、価格に関する一致が重要です。

そのため、兄弟間での共有土地の売却に際しては、あらかじめ「どれだけの価格であれば売却するか」という最低売却価格を合意しておくことが重要です。

最低売却価格を決定するには、複数の不動産会社に査定を依頼し、土地の適正な価値を冷静に把握することが必要です。6社程度に査定を依頼すると、4社が3,000万円から3,100万円に集中し、残りの2社が3,500万円前後となる可能性があります。

このような場合、兄弟で「3,000万円以上の価格がついたら売却する」という合意を事前に取り決めます。もちろん、3,500万円程度の買主も現れるかもしれませんが、なかなか見込みが立たない可能性も考慮すべきです。

共有物の売却において、共有者のスムーズな意思決定を確保するためにも、最低売却価格の設定は重要です。

窓口役への謝礼の検討

共有物件の売却においては、不動産会社や司法書士、測量会社などの外部関係者との窓口を1人決めておくことが基本です。

外部関係者が「誰に相談すればいいのか分からない」という状況を避け、売却プロセスをスムーズに進めるためにも、窓口を一本化することが重要です。

ただし、この窓口役は休みなどがある場合でも負担がかかり、買主や他の兄弟との調整などに苦労することがあります。

兄弟のために尽力してくれている窓口役には、何らかの謝礼を検討することが、揉めずに売却を成功させるポイントです。

謝礼は金銭であっても良いですし、食事などでも構いません。
最初に、「売却が無事終わったら、兄さんの好きな鰻をごちそうするよ」といった宣言をするだけでも、かなりの効果が期待できます。

何かしらの形で感謝の気持ちを表すことで、窓口役が安心して業務に従事でき、円滑な売却プロセスが進むことでしょう。

大切なのは、誰かに仕事を押し付けるのではなく、協力する気持ちを持ちながら売却を進めることです。

税金の支払いについての留意点

相続した土地を売却すると、税金の支払いが発生する可能性があります。税金が発生した場合、換価分割は税引後の手取りを兄弟間で分割することになるため、慎重な注意が必要です。

土地を売却した際、譲渡所得がプラスになると税金が発生します。譲渡所得は以下の式で計算されます。

[ 譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 ]

ここで、譲渡価額は売却額、譲渡費用は仲介手数料などの売却にかかった費用です。取得費は土地の購入価額であり、購入額が分からない場合は概算取得費(譲渡価額の5%)が使用されることが一般的です。

税率は土地の所有期間によって異なります。5年超の場合は長期譲渡所得(所得税率15%、住民税率5%)、5年以下の場合は短期譲渡所得(所得税率30%、住民税率9%)と分類されます。相続の場合、所有期間は親のものを引き継ぎます。親が5年以上所有していれば長期譲渡所得の税率が適用されます。

長期譲渡所得で概算取得費を用いる場合、ざっくりとした目安として税金は約2割程度発生することを理解しておくことが重要です。

土地の分筆と分割に関する留意点

兄弟間で土地を相続した際、土地そのものを物理的に分割する「現物分割」が選択されることがあります。土地の分筆にはいくつかの条件や重要なポイントが存在し、それに注意することが重要です。

分筆には境界確定が不可欠

土地を分筆するには、その土地の境界が確定していることが不可欠です。

土地の境界には、主に2つの種類が存在します。

【土地の境界の種類】

  1. 民々境界(みんみんきょうかい): 隣地の土地との境界
  2. 官民境界(かんみんきょうかい): 公道との境界

分筆を行う場合、民々境界と官民境界の双方が確定している必要があります。官民境界が未確定の場合は、確定には時間がかかり、道路と正対する側の所有者の同意も必要です。

特に、道路と正対する側の所有者が多い場合は、その分、境界確定に要する時間とコストが増加します。境界確定には、所有者の同意が得られる必要があります。

境界確定のためのコストは、隣地所有者の数や道路と正対する側の所有者の数に依存します。条件によっては、100万円近くの費用が発生することもあります。また、所有者が多い場合は、半年以上かかることも考えられます。

境界が確定していない状態での分筆は難しく、時間と費用がかかることを理解し、計画を進める際にはこれらの要因を考慮することが重要です。

接道義務の遵守が不可欠

土地には、原則として都市計画区域および準都市計画区域内において、幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していない場合、建物を建てることができないという規制があります。これを「接道義務」と呼びます。

土地を分筆する際には、この接道義務を遵守することが極めて重要です。

例えば、上図のように土地を切り分けてしまうと、A地は接道義務を満たしていなくなります。
このような土地は「無道路地」と呼ばれ、建物の建設が許可されません。無道路地は利用価値や価格が大きく低下する可能性があります。

したがって、分筆を行う際には、無道路地を生じないように十分な注意が必要です。接道義務の遵守は、土地の有効な利用を確保するために欠かせません。

切り方による土地価値の変化に注意

土地の分筆において、切り方によって価値が異なる可能性がありますので、慎重な検討が必要です。

例えば、左側のAとBのような形状の土地は、形が不規則であるため、価値が低下する可能性があります。

同様に、右側のCとDのような土地は、間口が狭く奥行きが広い形状になっており、これも使い勝手が悪くなり、価値が減少する可能性があります。

土地の分筆を検討する際には、分割後の形状や使い勝手に注意を払う必要があります。十分な広さの土地は比較的容易に分割できますが、形状が複雑であったり、使い勝手が悪い場合は、慎重な計画が必要です。

分筆が難しい場合は、売却による換価分割を検討することも重要です。無理な分筆によって土地の価値を下げる前に、売却を考えることでより良い結果が得られる可能性があります。

まとめ

今回は、兄弟で土地を相続した際の揉める理由や対処法についてご紹介しました。

土地の相続で揉める原因として、以下が考えられます。

  • 遺言書がない
  • 不動産が多い
  • 現金が減っていた
  • 寄与分を主張する
  • 特別受益を主張する

兄弟間では、自分だけが得をするのではなく、お互いに譲り合って遺産を分割することが大切です。

共有のままだと将来的に売却が難しくなる可能性があるため、土地は単独所有か売却することが理想的です。

土地を分ける方法として、遺産分割協議、相続放棄、代償分割、換価分割、分筆による現物分割の5つがあります。

換価分割する場合は、最低売却価格や窓口役への謝礼を検討することがスムーズな分割につながります。また、売却による税金も考慮に入れましょう。

分筆による現物分割をする場合は、境界が確定していることが必要です。土地の切り方によって価値が変わる可能性があるため、慎重に考慮して行動しましょう。

最終的には、兄弟でしっかり話し合って分割方法を決めることが重要です。

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