「身寄りがないおひとりさまだけど、自分の死後に財産はどうなるんだろう」
このように、自分が亡くなった後の財産について考えることは重要です。
そこで、本記事では、身寄りがないおひとりさまが死亡した場合の財産の処理に焦点を当て、以下の内容についてご紹介します。
・死亡後の財産の処理
・自分の死後に発生する問題
身寄りがなく、死亡後の財産について不安や疑問を抱えている方は、ぜひ最後までご一読ください。
身寄りがない場合、死亡した人の財産は国庫に入る
身寄りがない場合、死亡した人の財産は最終的には国庫に帰属することが法律で定められています(民法959条「残余財産の国庫への帰属」)。
法定相続人は、法的に亡くなった人の遺産を相続する権利を持つ人であり、被相続人の配偶者や血縁関係にある子ども、両親などに限られます。
具体的な相続人になる可能性のある親族は以下の通りです。
- 配偶者
- 子
- 父母(子がいない場合。父母が死亡している場合は祖父母)
- 兄弟姉妹(父母がいない場合。兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪)
身寄りがない場合、法定相続人がいない可能性が高いため、死亡時の財産は国庫に入ります。また、たとえ法定相続人が存在しても、相続放棄された場合は相続人が不在となり、結果として財産は国庫に帰属します。
法定相続人がいなくても、特別縁故者が存在すれば遺産の相続が可能
特別縁故者とは、故人に法定相続人がおらず、特別に相続を受ける権利が発生した人のことを指します。代表的な特別縁故者の例には、亡くなった人の内縁の配偶者や事実上の養子が含まれます。
その他にも、被相続人の療養看護に特に尽力した親族や知人なども、特別縁故者に該当する可能性があります。法定相続人がいない場合でも、特別縁故者が認められれば、その人が遺産の相続を受けることができます。
身寄りがない場合でも、遺言書を残すことで相続を行う方法がある
遺言書を作成することによって、血縁関係のない他人や法人などに遺産を譲ることが可能です。
たとえ法定相続人が存在している場合でも、合法的かつ権利を尊重しつつ、遺言書に基づいて第三者へ遺産を贈与することができます。
ただし、遺言書を作成するには法的な要件があり、これに違反すると遺言は無効になる可能性があります。死後に遺言書に不備が見つかり、「希望どおりに遺産を譲れなかった」という状況を避けるためには、相続に詳しい専門家に相談することが重要です。法的な手続きや要件を正確に把握し、希望する相続を確実に実現するためには、専門家のアドバイスを受けることがおすすめです。
身寄りがない人が亡くなった場合、以下のような問題が発生
- 孤独死して気づいてもらえない: 周りに親族や身寄りがない場合、孤独死しても誰かが気づいてくれない可能性があります。
- 葬儀や遺品処理が複雑で迷惑をかける: 身寄りがない場合、葬儀や遺品処理が複雑になり、周囲に迷惑をかけることが懸念されます。
- 財産まわりの処理で知人や地域の人に手間をかける: 身寄りがないと、財産の処理が困難となり、知人や地域の人に手間をかける可能性があります。
- 自分の財産が希望どおりに使われない: 身寄りがない場合、財産が望ましくない方法で使用される可能性があります。
遺言書の作成を検討することで、これらの問題を軽減できます。遺言書を作成することで、自分が希望する相続人や財産の使い道を明確にすることができます。また、事前に財産管理等委任契約や後見人制度を検討することも、身寄りがない状況において有益です。これらの対策を講じることで、自分の死後における問題や迷惑を最小限に抑えることが可能です。
身寄りのない人が今から準備すべき3つのこと
- 財産管理等委任契約を結ぶ: 財産管理等委任契約を結ぶことで、信頼できる代理人に財産の管理を任せることができます。健康なうちに契約を結ぶことで、将来的な心配を軽減できます。
- 後見人制度を活用する: 後見人制度は、心身の状態が不安定で自分で意思決定が難しい場合に、法的なサポートを受けるためのものです。後見人を指定しておくことで、将来的な事態に備えられます。
- 遺言書を作成する: 遺言書を作成することで、自分の財産が希望通りに相続されるように指示できます。希望する相続人や財産の使途を具体的に記載することで、後々のトラブルを避けることができます。
これらの準備を健康なうちに進めておくことで、将来における不安や心配を軽減し、自分の希望通りの形で財産や事務手続きが処理されるようにすることができます。
財産管理等委任契約を結ぶ
財産管理等委任契約とは、契約者が病気や怪我もしくは死亡したときに財産管理などに関する法律行為を第三者に委任する契約です。
契約内容によっては、財産管理にとどまらず、家の賃貸契約や入退院時の清算、福祉サービスなどの退所手続きなどもしてもらえます。
身寄りのない人は、財産管理等委任契約を結んでおくと死後に必要な雑務を代行してもらえるので安心です。財産管理等委任契約は、友人など信頼できる第三者ならだれでも可能です。
ただし、実際にはサポートしてくれる内容にも限界があり、契約を悪用した事件も発生しています。業務監督してくれる弁護士や行政書士など、第三者を交えて契約書を結んでおくと安心です。
後見人制度を活用
後見人制度を活用する際、身寄りのない人におすすめなのは任意後見人の制度です。この制度を利用することで、自分の判断力が低下した場合でも、第三者が契約内容に基づいて財産管理を代行してくれるため、安心感があります。
後見人制度には、任意後見人と法定後見人の2つの形態が存在します。
任意後見人は、心身ともに健康で判断能力がしっかりしている人が、将来のために契約内容を取り決めるものです。本人が財産を管理できなくなった際には、管理や手続きを代行してくれます。
一方、法定後見人は、本人が亡くなった後に発生する問題やトラブルを解決するために、血縁や相続人が裁判所に申し立てを行い、管理やサポートを行う制度です。
親族がいない場合や、親族に迷惑をかけたくない場合には、健康なうちに自ら任意後見人を選定することが重要です。任意後見人を選ぶことで、自分の認知力が低下した場合や病気になったときにもある程度の安心感を得ることができます。
遺言書を作成
遺言書を作成することは、身寄りのない人でも自らの希望を記載し、他者や慈善団体に財産を譲る手段として有益です。これを遺贈寄付と呼びます。
遺贈寄付は、被相続人の遺産を遺言書によって特定の団体や個人に譲渡することで、社会貢献活動に役立てられます。
身寄りのない人が国に遺産を納めるよりも、自分が支持する活動や団体で有効に活用されることが希望である場合、遺贈寄付は意義深い選択となります。
遺言書を作成することで、自分の遺産を社会貢献のために活用したいと考える人にとって、具体的な遺贈寄付先や希望事項をしっかりと記述することが重要です。子どもの未来の支援や災害被災者への支援など、個々の想いを具現化する手段として、遺言書は有益です。
遺贈寄付に関心がある方は、詳細やメリット・デメリットについて知りたい場合は、専門家の助言を得たり、関連情報を参考にすることがおすすめです。