兄弟姉妹など他の相続人との絶縁状態では、相続トラブルが発生するリスクが高まります。争いごとを避けるためには、問題が激化する前に第三者を仲介に入れて、遺産分割協議を進めることが重要です。相手の居場所が不明な場合には、「不在者財産管理人」を指定する必要があります。親族と絶縁している場合の遺産相続手続きの進め方を丁寧に解説します。
絶縁している相続人がいる場合の一般的な相続トラブル
絶縁している相続人がいる場合の一般的な相続トラブルには、遺産分割協議の実施が挙げられます。遺産分割協議は相続人全員で話し合って合意を形成する必要があります。そのため、連絡をとりたくない絶縁状態の相続人がいると、協議が難航し、遺産分割が進まずに時間が経過することがあります。
遺産分割を放置すると、他の相続人が独断で遺産を処分する可能性があります。例えば、不動産の場合、他の相続人が法定相続分に応じた登記を行い、自身の持分に相当する部分を第三者に売却することが考えられます。預貯金の場合も、凍結がない限り他の相続人が自分の法定相続分を引き出し、残高がゼロになる可能性があります。
絶縁状態では相続人の所在が不明で連絡がとれないため、遺産分割の進行が難航することもあります。これにより、不在者財産管理人の選任や遺産分割調停、審判の長期化などが生じ、解決までに時間がかかる可能性が高まります。
絶縁している相続人がいる場合の相続手続きの進め方
絶縁状態の相続人が存在する場合、どのように手続きを進めるべきかについて考えてみましょう。相手の所在が判明している場合と不明な場合についてそれぞれ検討します。
相手の所在が明確な場合
相手の所在が明確であっても、絶縁状態である場合、直接対面して話し合うことは難しいことがあります。このような状況では、メールや手紙を通じて冷静にコミュニケーションをとる試みや、絶縁していない他の親族を介入させることが考えられます。しかし、最も効果的な方法として、専門家である弁護士に代理人として交渉してもらい、話し合うことがおすすめです。
相手の所在が分からない場合 (所在調査)
相手の所在が不明な場合、まず所在調査を行います。所在調査は、戸籍の附票や住民票の取得から始めましょう。戸籍の附票は、本籍地の市区町村で戸籍と一緒に保存されている文書で、戸籍に記載されている人の住所が記録されています。ただし、海外に転居している場合は、転居先の国名までしか記載されておらず、住所が特定できないケースがあります。このような場合には、外務省を通じて所在調査を行う方法も考えられます。
相手の所在がわからない場合(遺産分割の方法)
相手の所在が不明な場合、遺産分割の方法として一般的な手続きは、「不在者財産管理人」の選任を通じて遺産分割協議を進めることです。
不在者財産管理人は、所在不明な相続人の財産を管理するために家庭裁判所が指定した担当者です。所在不明の相続人がいる場合、他の相続人は家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を申し立てます。その後、裁判所が指名した不在者財産管理人と他の相続人が協議を行い、遺産分割の手続きを進めます。
また、相続人の所在が長期間判明していない場合、生死不明となってから7年以上経過している場合は、失踪宣告を申し立てることも考えられます。失踪宣告が認められると、その人は生死が不明なまま7年経過したものとみなされ、相続手続きが進行します。ただし、失踪宣告手続きには1年以上かかることがあり、また、失踪者の相続も開始され、結果的に当初の遺産分割当事者が増加する可能性があるため、慎重な対応が求められます。
これらの所在調査や不在者財産管理人の選任、失踪宣告の手続きなどは、弁護士に相談・依頼することができます。
相続開始を知ってから3カ月が経過していない場合
相続が始まったことを知ってから3カ月が経過していない場合、相続放棄が選択肢となります。相続放棄は、被相続人が亡くなり、かつ自分が相続人であることを知った時点から3カ月以内に行うことが可能です。
被相続人の死亡と自身の相続人であることを知った日から3カ月が経過していない場合、いつ知ったかに関わらず相続放棄が認められます。ただし、知った日から3カ月以内であることを示す必要があります。知識が遅れて入手された場合でも、家庭裁判所に対していつ知ったかについて説明することが求められます。
相続トラブルが原因で絶縁状態に陥るケースは多い
元々仲の良かった相続人同士でも、相続トラブルが発生することで絶縁状態になることがあります。
例えば、父親の相続において兄弟姉妹間で対立が生じ、その結果絶縁状態になり、母親の相続時には遺産分割協議が複雑になるケースが挙げられます。遺産分割協議では、相続人それぞれが何十年もの感情や歴史を抱えており、感情的な対立が発生することもあります。冷静で慎重な対応が求められる状況です。
絶縁した兄弟姉妹との遺産分割を弁護士に依頼する際の利点
まず第一に、弁護士への依頼により、遺産分割協議は弁護士が代理人として対応してくれます。これにより、自らが他の相続人と直接やりとりする必要がなくなり、絶縁した相手との直接の関わりを回避することができます。
また、感情的な葛藤が軽減され、弁護士が有利な主張を行うことで、スムーズで有利な解決が期待されます。さらに、遺産分割において裁判所の手続きが必要な場合でも、弁護士に任せることで安心感が得られます。
まとめ
絶縁している不仲な相続人が共同相続人の中に含まれる場合、遺産分割の話し合いは複雑であり、相続トラブルが発生する可能性が高まります。このようなケースでは、早めに弁護士に相談し、遺産分割をスムーズに進めることが重要です。