義母の遺産相続において連れ子に相続権はあるのか?

現在の離婚率は3人に1人以上とされています。内閣府男女共同参画局の「結婚と家族をめぐる基礎データ」によると、再婚率も上昇しており、結婚するカップルのうち再婚カップルは全体の26.7%(2019年現在)を占めています。このため、連れ子とともに再婚するケースも増加しています。

ただし、連れ子には法律上相続権が認められていないため、親の再婚相手が亡くなった場合、連れ子が遺産相続に関与することはできません。連れ子は法的に実子などとは異なる立場にあり、財産を遺す場合は特別な対策が必要です。

この記事では、連れ子に対する遺産相続の方法について分かりやすく解説します。また、法定相続人との違いや法定相続分の割合についてもご参考にしてください。

目次

配偶者の連れ子に相続権はない

配偶者の連れ子には法定相続権が認められていません。そのため、義父や義母が亡くなっても、連れ子は法定相続人とはなりません。具体的なケースとして、父親が亡くなった場合、相続人は母親(現在の配偶者)と子供A・子供Bのみです。

連れ子には相続権がないため、再婚相手と同居していても、法定相続人には含まれません。法定相続人の範囲と順位において、配偶者は必ず相続人になりますが、連れ子は直系卑属として認識されていません。

【法定相続人の範囲と順位】

  • 配偶者は必ず相続人になる
  • 第1順位:被相続人の子供(直系卑属)
  • 第2順位:被相続人の両親(直系尊属)
  • 第3順位:被相続人の兄弟姉妹

ただし、特定の対策を講じることで、連れ子にも相続権が生じる可能性があり、それにより義父や義母の遺産相続が可能になります。

連れ子に遺産を相続させる方法

連れ子に遺産を相続させる方法として、遺言書の作成や養子縁組が挙げられます。連れ子は通常、義父や義母の法定相続権を有していませんが、これらの方法を活用することで、法的手段を用いて遺産相続を可能にできます。

遺言書を作成する場合、その内容に連れ子を含めることで、遺産を希望通りに分けることができます。また、養子縁組を選択することで法的な手続きを経て、連れ子を実子と同様に扱うことができます。

ただし、遺贈を通じて財産を渡す場合、相続税の負担が増加する可能性があります。連れ子の税負担を含め、総合的な検討が必要です。

遺言書を作成する

遺言書を作成する際には、受遺者(遺言によって遺産を受け取る人)に連れ子を指定することが可能です。遺言書が要件を満たしていれば、他の相続人が無効を主張しても法的効力があり、基本的には遺言内容に従わなければなりません。

ただし、遺言書の作成には厳格なルールがあり、「○○に△△を遺贈する」といった具体的な表現が必要です。例えば、「連れ子に相続させる」と書いた場合、法定相続人が「遺贈と書かれていないため無効だ」と主張する可能性があるため、慎重に注意が必要です。確実な遺言書を望む場合は、公証役場で公正証書遺言を作成することが一つの方法です。

連れ子に遺産を渡す場合、相続税が発生し、2割加算が適用されます。これは法定相続人以外の第三者に対する相続税の増税措置であり、具体的な金額や計画を考慮する必要があります。養子縁組と比較検討し、最適な方法を選択することが重要です。

連れ子と養子縁組する

連れ子と養子縁組を行うと、養子は養親(親の再婚相手)が亡くなった場合に法定相続人となります。連れ子と養親との血縁関係はないものの、養子縁組により法定血族として扱われ、相続権は実子と同等になり、遺留分も保障されます。

さらに、相続税の基礎控除は法定相続人の数に応じて計算されますが、養子の数には以下の制限があります。

相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人にカウントできる養子の人数:実子がいれば1人、いなければ2人まで

ただし、連れ子(配偶者の実の子)を養子にした場合は人数制限がないため、連れ子との養子縁組は相続税対策として有効です。

連れ子に相続させるときの相続分

養子縁組した連れ子は実子と同じ相続分を有する一方、遺言書の場合は相続分を自由に指定できます。いずれも一定の基準が存在するものの、相続分が偏らないように留意することが重要です。

連れ子を養子にしたときの相続分

養子縁組した場合、相続財産の法定相続分が定められており、通常は法定相続分を基に遺産分割が行われます。以下に、相続状況に応じた法定相続分の例を示します。

【相続状況に応じた法定相続分】

  • 配偶者と子供が相続するとき:配偶者1/2、子供1/2
  • 配偶者と被相続人の親が相続するとき:配偶者2/3、被相続人の親1/3
  • 配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続するとき:配偶者3/4、被相続人の兄弟姉妹1/4

次に、養子の義父(母親の再婚相手)が亡くなった場合の法定相続分について、具体的な例を見てみましょう。

【相続の発生状況】

  • 被相続人:義父(母親の再婚相手)
  • 相続人:母親、養子、実子2人

法定相続人が4人となり、養子と実子は同じ法定相続分を有するため、以下の割合を基に遺産分割が行われます。

各自の法定相続分:母親1/2、養子と実子2人はそれぞれ1/6ずつ

ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分以外の割合で遺産分割することも可能です(遺産分割協議)。

遺言書で指定する相続分

遺言書においては、遺産の分配を自由に指定できるため、実子と同じ法定相続分を与えることや、連れ子に対して財産を偏らせることが可能です。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人は遺留分が法律で定められており、極端な偏りがあると、連れ子が他の相続人から遺留分侵害額を請求される可能性があります。

遺留分とは、民法で定められた最低限の相続分であり、子供(養子を含む)には法定相続分の1/2が保障されています。

以下のようなケースでは、遺留分の侵害が発生し、注意が必要です。

【相続の発生状況】
被相続人:義父(母親の再婚相手)

相続人:母親、養子、実子2人

計算式

配偶者の遺留分:6,000万円×1/2×1/2=1,500万円

計算式

実子2人の遺留分:6,000万円×1/6×1/2=1人あたり500万円

このように、連れ子に多くの遺産を分け与えた結果、他の法定相続人の遺留分が侵害される場合、連れ子は侵害分の返還請求に応じなければなりません。

なお、かつては不動産相続での遺留分侵害は現物返還が原則でしたが、2019年7月1日の法改正により、金銭請求・金銭支払いが基本となっているため、不動産相続の際はその点に留意する必要があります。

まとめ


家族として円満に過ごしていても、連れ子には実子と同等の法的権利が認められていないため、義父や義母の財産は自動的に相続されません。しかし、遺言書を作成することで確実に財産を配分でき、養子縁組を結ぶことで連れ子も法定相続人となります。養子縁組は相続税の基礎控除にも影響し、税負担の軽減につながるでしょう。

ただし、自分で作成した遺言書が無効になりやすいことや、養子縁組によって養子と実子が対立するケースも考えられるため、財産や家族の状況を慎重に考慮する必要があります。

複雑な家族構成や遺産の分配に関して疑問や問題が生じた場合は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することが重要です。相続に特化した専門家は遺言書の作成などもサポートしてくれるため、的確なアドバイスを受けることができます。

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