親が亡くなると、遺産にはしばしば車が含まれることがあります。一方で、相続後の車の処分方法についてはあまり知られていません。
この記事では、亡くなった方が所有していた車をどのように処分するかに焦点を当て、具体的な事例を交えながら解説します。記事を通じて、
- 相続後の車の処分方法
- 車の名義変更に関する手続き
- 遺産分割協議の進め方
などについて理解を深めることができるでしょう。この記事がお役に立てれば幸いです。
車の所有者が死亡場合、その車は遺産とみなされる
このため、相続手続きが必要であり、遺産分割協議を実施し、誰が車を相続するかについて検討する必要があります。
以下では、亡くなった所有者の車に関する権利に焦点を当て、相続手続きの必要性について解説します。
死亡後、車は遺産分割協議が行われるまで共有状態となる
車の所有者(以下「被相続人」)が亡くなると、車は相続人たちによって共有持分権を有する状態となり、一人の相続人が独自に車を処分することは認められません。
道路運送車両法13条によれば、「新規登録を受けた自動車について所有者の変更があったときは、新所有者は、その事由があった日から15日以内に、国土交通大臣の行う移転登記の申請をしなければならない。」と規定されています。この規定に違反すると、最大で50万円以下の罰金が科される可能性があります(同法109条)。
従って、車の所有者が亡くなった場合は、迅速な遺産分割協議を行い、名義変更を行うことが必要です。名義変更手続きを速やかに進めることが、法的な要請となっています。
車の所有者が亡くなった場合、遺産全体の相続手続きが必要
車だけを優先的に相続することは、後になって協議が複雑になる可能性があるため、遺産分割協議では遺産全体を総合的に検討する必要があります。
従って、車の所有者が亡くなった際は、遺産全体に関する協議を行い、その中で車の相続人を明確に決定することが求められます。
車は名義変更手続きを経て相続人に引き継がれ、その後売却や廃車手続きが可能です。逆に言えば、名義変更手続きを怠ると車を処分することはできません。
ただし、この手続きには例外も存在し、車の処分だけを比較的簡便に行うこともできます。これについては後述する「車の相続人を決める方法」で詳しく解説します。
遺産分割協議を行う前に、被相続人の遺産を確認する
被相続人が所有していると思われる車であっても、実際には別の人が所有者である可能性があります。このような場合には特に注意が必要です。
車検証を確認する
車の所有者を確認する方法は非常に簡単です。車検証を確認することで、その所有者が明らかになります。車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄に記載がある方が所有者となります。
また、「使用者の氏名又は名称」の欄には、当該車の使用者が記載されています。通常、所有者と使用者は同一になっていることが一般的ですが、中には別々になっている場合もあります。
以下では、所有者と使用者が異なる場合の影響について解説します。
車の所有者が被相続人本人である場合
車の所有者が被相続人本人である場合、その車は問題なく遺産の一部と見なされます。この状況では、特に遺産分割協議前に行うべき特別な手続きはありません。
後述の「3.車の相続人を決める方法」において解説するように、遺産分割協議を通じて相続人を確定し、名義変更手続きを行えば十分です。
車の所有者がローン会社やディーラーの場合
車の所有者がローン会社やディーラーである場合、その車には所有権留保が設定されています。所有権留保は、売買代金が完済されるまで、所有権を売主に留保する特約を指します。
所有権留保の特約により、車の所有権がローン会社やディーラーに帰属している場合、被相続人は車の使用権しか有しておらず、自由に処分することはできません。そのため、後で行われる遺産分割の際には、相続人が残ローンの支払いを検討する必要があります。
相続人はまず、ローン会社に問い合わせをし、残ローン額を確認することから始めるべきです。確認の結果、残ローンが既に完済されていれば、所有権留保の解除手続きを進めれば良いです。一方で、残ローンがまだ残っている場合は、相続人が残額の支払いを検討するか、新たにローンを組み直す必要が生じるでしょう。
車の相続人を選ぶ方法
遺産分割協議には厳格な規定がないため、相続人同士が協議できる場合、柔軟かつ協力的な方法で問題を解決することができます。
遺産分割協議の方法について
- 相続人間での話し合い:
最も一般的な相続人の決定方法は、相続人同士が実際に話し合って合意を形成することです。この協議は、一同に会する必要がなく、書面や電話を通じて進めることもできます。まずは被相続人の遺言の有無を確認し、遺言があればその内容に従います。遺言がない場合は、法定相続割合を参考にして話し合いを進めます。法定相続割合に厳密に縛られず、柔軟に決定することができます。 - 遺産分割調停・審判の利用:
相続人間での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることが必要です。遺産分割調停では、第三者である調停委員がアドバイスを提供し、話し合いを進めやすくなります。調停でも合意が得られない場合は、遺産分割審判が行われ、審判官が最終的な決定を下します。
車の相続にはいくつかの方法がある
一つ目は、相続人の中で一人が車を単独で相続する方法です。この場合、名義を相続人に変更することで、その相続人が独自に処分を行うことが可能です。
二つ目として、共同相続する方法が考えられます。これは相続人全員で所有を共有する状態を維持するものであり、車を処分する際には共有持分者全員の同意が不可欠です。
基本的には一つ目の単独相続が好ましいと言えますが、車の資産価値が高く、相続人間での協議が難しい場合は、当面は共有状態とするという方法も考慮されます。
ただし、車を処分する際には共有持分者全員の同意が必要であり、手続きが複雑になる点に留意が必要です。このようなデメリットを考慮し、慎重に検討することが重要です。安易に共有状態にすることは問題を先送りする可能性があるため、注意が必要です。
例外的な遺産分割協議成立申立書
特殊なケースとして、車の相続において例外的な手続きとして「遺産分割協議成立申立書」を作成することが考えられます。この書類は、相続する車の価値が100万円以下の場合に利用できる手続きであり、手続きが簡便な特例となります。
この方法では、被相続人の全遺産にわたる協議が不要となり、車の迅速な処分が可能です。
遺産分割協議が終了し、相続人が確定したら、次に車の名義変更手続きを行う
以下では、名義変更の手順を順を追って説明します。
書類の取得
名義変更の手続きに際して、相続人が用意できる書類と、運輸支局で手配が必要な書類があります。
通常は、販売店や代行業者に手続きを依頼することも考えられますが、今回は自ら手続きを行うことを前提に説明いたします。
相続人が事前に用意できる書類には、以下のものが含まれます。
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明書
- 車検証
- 車庫証明書
- ナンバープレート
一方で、運輸支局で手配が必要な書類には、以下が含まれます。
- 手数料納付書
- 自動車税申告書
- 申請書
車庫証明書の取得
車の保管場所が変更になる際は、新たな車庫証明書が必要です。
車庫証明書の申請は、通常、警察署で行います。申請書は警察署内で入手でき、提出も同じく警察署で行います。申請書の提出後、約一週間ほどで車庫証明書が交付される見込みです。
なお、車の保管場所が変更されない場合は、新たな車庫証明書の取得は不要です。
運輸支局への提出と車検証の受領
用意した必要書類を携えて、運輸支局に提出します。手続きに不備がなければ、車検証が発行され、これを受け取ることで名義変更手続きは完了します。
自動車税の手続き
運輸支局内には税申告窓口が設けられており、自動車税・自動車取得税申告書と車検証を提出します。自動車取得税が課される場合は、ここでその支払いが行われます。自動車取得税は、取得価額に3%をかけた金額となります。
(ナンバープレートの変更が必要な場合)ナンバープレートの交換
ナンバープレートを変更する際は、運輸支局内で現行のナンバープレートを返納します。ナンバープレートの外し方などは、返納窓口でスタッフから指示を受けることができますので、その指示に従って手続きを進めましょう。
新しいナンバープレートは、運輸支局内で購入することができます。希望するナンバーがある場合は、事前にその旨を申請しておくことができます。
名義変更後の車の処分について
最後に、車の名義変更が完了した後には、車をそのまま使用するか、あるいは売却や廃車にするかといった選択が生じます。
車をそのまま乗り続ける場合や、売却や廃車を検討する際に必要な書類や手続きについて説明いたします。
相続した車をそのまま利用する場合
相続した車をそのまま利用する際には、先述の手続きに加え、新たな手続きは必要ありません。
ただし、必ず自動車の任意保険に加入するようにしましょう。
被相続人が契約していた自動車保険の名義変更を検討することも考えられます。また、新たに自動車保険に加入する場合もありますが、その際は被相続人の自動車保険を解約する必要があります。
車を売却する際
相続した車を売却することも視野に入れることがあります。
車を売却するには、以下の書類が必要です。
- 自動車検査証
- 自賠責保険証明書
- 住民票(住所変更がある場合)
- 自動車納税証明書
- 印鑑登録証明書
- 譲渡証明書
- 実印
車を売却する場合、売却先の選定が非常に重要です。ユーカーパックでは一度の査定だけで十分で、オークション形式で高値で車を売却することが可能です。
また、必要な書類などについても電話で親切に案内してくれるので、おすすめです。車を売却検討中の場合は、ユーカーパックを検討してみる価値があります。
車を廃車にする手続き
車を廃車する際には、以下の書類が必要です。
- 自動車検査証
- 自賠責保険証明書
- リサイクル券
- 実印
- 印鑑登録証明書
- ナンバープレート
必要な書類を取得したら、これらを運輸支局に提出することで廃車手続きが完了します。廃車が確定すると、一時抹消登録証明書が交付されます。なお、全てを廃車業者に委ねることもできますが、事前に売却を検討することをお勧めします。
廃車手続きが完了した後は、税事務所で税金の還付を受けるための手続きを忘れずに行いましょう。
相続税について
車を相続した場合、その価値も含めた総遺産額が基礎控除額以下であれば、相続税の課税対象外となります。
基礎控除額は、3,000万円に相続人の人数×600万円を加えた金額です。死亡日の車の評価額を含む総遺産が基礎控除額を上回る場合、相続税の支払いが発生します。
まとめ
被相続人の遺産に車が含まれる場合は、確実に名義変更を行う必要があります。名義変更を怠ると、最悪の場合、罰金が科される可能性があります。
分からない点があれば、都度、専門家に相談することをお勧めします。相続に関する疑問や手続きについての不明点は、無料相談を受け付けている弁護士などを利用すると良いでしょう。名義変更手続きの具体的な方法が分からない場合は、運輸支局に直接問い合わせてみることも一つの手段です。