介護にまつわる事例で、遺産相続に関連したトラブルが頻発しています。
相続制度は複雑で手続きが煩雑なため、知識が不足しているまま相続手続きを進めると、家族関係に亀裂が生じる可能性があります。同時に、借金の存在を知らずに巨額の「負の遺産」を相続するリスクも考えられます。
介護に関連した相続トラブルの発生要因や予防策について詳しく解説します。
相続でのもめごとは介護があった家庭でおきやすいぞ
介護で発生するトラブルになるケース
相続人の関係については以下の記事をよんでくれよな
トラブルになるケース1|法定相続分が介護に見合わない
最初に考えるべき点は、法定相続分が介護に見合っていないというケースです。
長い間介護に尽力してきた人は、他の兄弟よりも相続時に多くの遺産を受け取りたいと思うでしょう。しかしながら、民法では複数の相続人がいる場合の法定相続分が規定されています。
例えば、兄弟だけが相続人の場合、遺産は均等に分割されることが通例です。そのため、「献身的に介護を行ったにもかかわらず、法定相続分が介護内容に見合わない」というトラブルは珍しくありません。
遺産の中で他の兄弟よりも多くを受け取る権利(寄与分)を主張することはできますが、寄与分が裁判所で認められる可能性は非常に低く、思い描いた金額よりもはるかに少ない遺産しか相続できないかもしれません。
法定相続分が介護内容に見合わない場合、そのことがトラブルの原因となりかねないので注意が必要です。
法廷で介護の貢献分によって相続金額が大きくなった判例はあまりないらしいぞ。
トラブルになるケース2|生前贈与を受けていた相続人がいる
たとえば、相続時に兄弟の中の一人が生前の両親から土地の一部を贈与されたり、住宅購入資金の援助を受けたりしていた場合、これが明るみに出ることで不公平感が生まれ、それが原因でトラブルが発生することがあります。
民法には、「特別受益の持ち戻し」という制度があります。これは特定の相続人が受けた贈与を相続財産に含め、遺産を公平に分配するためのものです。しかし、遺産分割協議が難航し、これが原因でこれまで良好だった家族関係が損なわれることもあります。
トラブルになるケース3|マイナスの遺産がある
通常、相続においては両親の預金や住宅などの資産を考えることが一般的ですが、民法では消費者金融などからの借り入れによる「負の遺産」についても相続が規定されています。相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、限定承認や相続放棄などの手続きを行わなければ、相続人は多額の負債を負う可能性があります。
両親の遺産が具体的に何を含んでいるかを慎重に調査し、相続を行う前に適切な手続きを踏むことが重要です。
相続放棄や限定承認という手続きをしないと、負の遺産も相続対象になるから気をつけろよ
トラブルになるケース4|トラブルで家族仲が険悪に
相続問題において、それまで円満だった家族関係が以下の理由から険悪になることがあります。
- 献身的な介護にもかかわらず、その寄与が配慮されない
- 遺言書において特定の相続人が優遇される
- 相続人たちの間で遺産分割協議が難航し、問題が泥沼化する
これらの問題は、高額な遺産が絡む富裕層の家庭だけでなく、法務省の資料によれば相続財産が5,000万円以下のケースでも極めて頻繁に発生しています。相続問題は、決して他人事ではないのです。
家族が仲良く過ごしてきた時間が相続を機に争いの原因となると、亡くなった被相続人も安らげない状況となります。
介護の相続トラブルが発生するのはなぜ?
遺言書がない場合、全員に合意を得なければ遺産分割ができないからです。
遺産分割協議を行う場合には、原則として相続人全員の合意が必要となり、一部の相続人を除外して行われた遺産分割協議は無効となる可能性があります。
しかし被相続人の兄弟やその甥・姪・孫が代襲して相続を行う様な場合には、日常的な関わりの少なさから関係性が希薄なことも多く、なかなか協議が整わないというケースも珍しくありません。
遺産分割協議の話し合いの場が初対面であるという場合も多く、弁護士を立てた上で話し合いが進められることもしばしばあります。
遺言書がない場合、相続人全員の合意がないと割合が決められないんだ
介護の相続トラブルを防ぐための方法
介護の相続トラブルを対策するための方法を4つ教えるぞ
対策方法1|遺言書に遺産の割合を書いてもらう
遺産分配の対策の一環として、第一に考えられるのは、遺言書に遺産の分配割合を具体的に明記してもらうことです。
特に、介護を担当している場合で兄弟よりも多くの遺産を受け取りたい場合は、その願いを明確に両親に伝え、それを具体的に遺言書に記載してもらうことが極めて重要です。
近年、「介護離職」が深刻な社会問題として取り上げられており、介護に伴う負担は軽視できません。遺言書の作成は頼みにくいものかもしれませんが、遺言書が曖昧なまま相続が進行すると、トラブルの原因となりかねません。
円滑な相続のためには、自身の希望を明確に伝えるとともに、両親に遺言書の作成をお願いすることが重要です。
遺留分を侵害する遺言書もトラブルになるから注意が必要だぞ
対策方法2|介護者は通帳の管理をちゃんとしておく
介護による相続トラブルを防ぐためには、通帳管理者を明確にすることが重要です。
介護が開始されると、配偶者や兄弟などの介護責任者が通帳の現金の出し入れや介護費用、生活費の管理を担当することが一般的です。介護には多額の費用がかかることがあり、他の相続人に知らせずに被相続人の財産を使用している場合、相続時にトラブルが生じる可能性があります。
このような問題を回避するために、介護費用専用の通帳を作成し、金銭の流れを透明にするだけでなく、レシートや領収書をきちんと保存することが重要です。これにより、金銭の使用目的とその裏付けが具体的に示され、相続トラブルを未然に防ぐことができます。
対策方法3|相続放棄を行う
相続放棄とは、被相続人の財産を一切受け取らないことを指し、特に預金や有価証券などの財産よりも、「負の遺産」として消費者金融からの借入れなどが多い場合には、相続放棄が適切な選択となります。
もう一つの方法として被相続人のプラスの財産の範囲内でのみ相続を行う「限定承認」がありますが、これには相続人全員の同意が必要で手続きが複雑です。
相続放棄や限定承認の場合、相続が始まったことを知った日から3か月以内に手続きを行う必要があります。なお、被相続人の財産を勝手に使用すると法定単純承認とみなされ、相続放棄などの手続きが取れなくなる可能性があるため、注意が必要です。
何かトラブルが生じた場合は、速やかに弁護士に相談することが重要です。
負の遺産があるときは、すぐ専門家に相談することをおすすめするぞ
対策方法4|相続財産を明確にしておく
相続トラブルを未然に防ぐためには、被相続人の財産が具体的に何で構成されているかを知り、相続財産を明確にする必要があります。
相続においては、銀行預金や土地、自宅、有価証券などの資産だけでなく、住宅ローンや消費者金融からの借入れなどの「負の遺産」も相続の対象となります。これにより、相続人が多額の負債を引き継ぐ可能性もあります。
さらに、相続人の中には預金や有価証券などの資産よりも、住み慣れた自宅や骨董品などの特定の財産を希望する場合もあり、遺産を巡るトラブルが発生することも考えられます。
円滑な相続手続きを行うためには、弁護士などの専門家による相続財産の調査を行い、相続の具体的な内容を明らかにすることが重要です。
介護の相続トラブルは弁護士に相談するべき?
いざ、相続トラブルが起きた時に、本当に弁護士の相談が必要なのでしょうか?
すでに話し合いが難航しており、解決が難しいと感じた場合には、相談することをおすすめします。
実際に弁護士ができる内容を具体的に説明します。
弁護士費用について詳しく解説したので読んでみてくれ
弁護士ができること1|遺産分割の交渉
弁護士の役割の一環として挙げられるのは、兄弟間の対立解決です。
弁護士は、プロの法律家として、相続に関する相談や紛争解決のサポートを提供することができます。
遺産相続は、遺言書の内容に基づいて進めることもできますし、相続人同士の協議によって進めることもできますが、相続財産に関する意見の不一致からトラブルが生じるケースも珍しくありません。
相続が紛争に発展していない場合、行政書士や司法書士などの専門家に書類作成や登記などの手続きを依頼することも考えられます。しかし、相続人たちの協議が進まない場合には、弁護士が介入し、冷静で論理的な話し合いを促進することが有益です。
弁護士ができること2|財産の調査
弁護士が担える2つ目の役割は、財産を細かく調査し、把握することができます。
相続手続きは、被相続人の遺産の詳細な把握から始まりますが、弁護士は被相続人の相続財産調査を行うことができます。相続の対象となる財産には、以下のようなものが含まれます。
- 不動産
- 預貯金
- 有価証券
- 貴金属
- 仮想通貨
- 骨董品
法的な根拠に基づいて遺産を主張することで、受け取るべき財産を逃すリスクを回避することができます。
また、被相続人が生前に多額の負債を抱えている可能性がある場合には、相続放棄や限定承認などの手続きを迅速に検討する必要があり、その点からも弁護士による相続財産調査は重要です。
弁護士ができること3|相続の手続き
相続手続きでは、相続が始まってから3か月以内に特別な手続きを行わない限り、法定の単純承認が適用されます。その一方で、相続放棄や限定承認、または遺留分の減殺請求などは、煩雑な手続きが伴うことがあります。
相続人間の関係が悪化している場合や、代襲相続のように相続人が誰か明確でない場合、自己解決が難しい状況もあります。これらの問題に対処するためには、弁護士としての専門知識を持つプロの助力が有益です。弁護士は複雑な相続案件や手続きを迅速かつ確実に処理する能力があり、早い段階で相談を行うことが重要です。
まとめ
今回は、介護に関連した相続トラブルの実態や予防策について解説いたしました。
介護にまつわる相続トラブルは他人ごとではなく、これまで円滑だった家族関係が亀裂を生み出し、大きな問題に発展することがあります。
被相続人が亡くなった後に余裕を持って相続手続きを進めるためにも、遺言書の作成サポートや相続財産の調査などについて、ぜひ弁護士に相談してみてください。
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